俺様紳士の恋愛レッスン
「おまたせ!」

「いや、わりーな。つーか髪半乾きじゃねーか」



そう言って私の耳の横の髪束を掬い、くるくると弄ぶ十夜。

ぐっと近くなる距離にドキリとするけれど、自分のシャンプーの香りが邪魔をして、清涼な香りが届かない。



「だって十夜が急かすから」

「あーそうだな、悪い」



十夜はばつが悪そうに視線を反らすと、自動販売機に小銭を投入した。


……何やら様子がおかしい。

今の十夜は拍子抜けするほどしおらしい。



「お前も選べ」

「え? あ、じゃあCCレモンを」



十夜は吐き出された缶を拾って私に差し出すと、「ちょっと付き合え」と言って歩き始めた。


チャコールグレーから白のYシャツへと変わったシルエット。

その意外と広い背中に、ついこの間、この場所で、十夜に抱き締められた記憶がぶり返し、鼓動がゆるりと速度を上げる。

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