俺様紳士の恋愛レッスン
やがて信号に捕まると、前のめりだった十夜の体勢が解かれて、コツンと当たったヘルメット。



「……か?」

「えっ? なに?」



エンジン音に消されてしまった十夜の声。



「聞こえな……」

「大丈夫か?」



顔を上げた瞬間、振り向いていた十夜と目が合った。

その距離、ほぼゼロ。



「だッ、大丈夫!」



今までぴったりくっついていたのに、目が合った途端とんでもなく恥ずかしくなって、思わず後ろに仰(の)け反った。

圧迫されていた胸が解放されて、滞った血流が一気に流れる。



「ならいい。あと少しだ、飛ばすぞ」



そう言って、離れた私の腕を当然の如く引き戻して、再び自分の腰に巻きつけた十夜。

ここでも私ばかりが必死な事実がほんの少し悔しくて、手繰り寄せたワイシャツの裾をぎゅっと握り締めた。

< 259 / 467 >

この作品をシェア

pagetop