俺様紳士の恋愛レッスン
「――やだ」



やがて、考えるよりも先に口を衝いて出た言葉。



「私、まだ別れてない。正しい幸せ教えてもらってない。なのに、なんで終わりなの?」



二言前まで自分が悪いと言っていた口が、今度は被害者を演じて物を言う。



「私バカだから分かんない。十夜の気持ちも、十夜の伝えたかったことも、全然分かんない」



呆れるほど自分勝手な感情論は、言い訳を並べて、必死に十夜を繋ぎ止めようとする。



「バカな私にも分かるように、ちゃんと教えてよ。殺さないでよ、感情……!」



駄々をこねる子供のように縋(すが)り、訴えた。

ハァ、と息を荒げる私に、十夜は暫しの間を置いて、はー、と冷淡な息を吐く。



「なら1つ教えてやる」



暗がりの中に浮かんだ、妖艶な笑み。



「俺は今、貴重なプライベートの時間を削られて、非常に気分がワルイ」



それは初めてホンモノの十夜を知ったあの日と、全く同じ表情だった。

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