俺様紳士の恋愛レッスン
「ンはッ……はぁ……ッ」



ゼロからイチへと離れた瞳は、熱を持って私を見下ろす。

私は呼吸をするのも精一杯なのに、十夜は小さく肩を揺らすのみ。

こんな時でも、私だけが乱れている。



「……なん、でッ……」



涙で歪む十夜の顔には、やはり感情なんて映っていない。

悔しくて、苦しくて、十夜を欲しがった唇をきゅっと噛み締めた。



「こんな時まで無表情でいられるの!?」



私の想いに答えることなく、十夜はただ、奪うようなキスをした。



「教えてよ! 十夜の気持ち!」



ワイシャツの胸元を手繰り寄せて、精一杯強気に十夜を睨みつけると、色の灯らない瞳が私を見下ろす。



「何度も言わせんな。お前に話すことはもう何もない」

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