俺様紳士の恋愛レッスン
私を突き放す冷淡な声色に、目尻に溜まった涙が零れた。



「ならどうしてキスなんかしたの!? 私バカだから勘違いするに決まってんじゃん!」

「それも言ったはずだ」



見上げた喉元の膨らみが、静かに落ちた。

時が止まったかのような長く短い沈黙の後、紡がれた音は、



「身体で払ってもらった。それだけだ」



私の想いも感情も、全てを否定した。



ズキンッ、と胸が痛むと同時に、一気に熱を上げる血流。

冷静はプツリと切れて、怒り任せの言葉を紡ごうとした唇を、十夜の手のひらがグッと抑える。



「さよなら、篠宮サン」



緩やかに笑った十夜は、瞼を下ろす。

そして音もなく、私の額にキスを落とした。

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