俺様紳士の恋愛レッスン
7月上旬

さよなら愛しのコンサルタント

明け方まで降り続いた雨も、正午を前にようやく上がったらしい。

カーテンを開けても目に痛い光量はないけれど、雲の層から顔を出す光の筋は、迷いなく一路で美しい。



「おはよーエンちゃん。今日、どこ行く?」



くしゃくしゃになったタオルケットを剥ぎ取って、タカちゃんは一段と柔らかい笑顔を私に向ける。


寝癖で跳ね上がった後ろ髪、脱力しきった猫背の背中。

ひと月ぶりに見る寝起きのタカちゃんは、髪が短くなったせいか、少しだけ新鮮な景色に映った。



「んー、顔洗いながら考えるね」



そう残し、一人洗面所へと向かった。


鏡に顔を寄せて、その先の自分をまじまじと眺める。

涙も声も枯れるほど泣いたはずなのに、思ったよりも瞼は腫れていないし、特別体調も悪くない。

心とは裏腹に、意外と強い自分の身体が少し憎い。

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