俺様紳士の恋愛レッスン
昨日の夜は、どうやって帰ってきたのかよく覚えていない。

帰宅してすぐにシャワーを被ってみたけれど、現実は少しも染みてこない。


気晴らしにバラエティ番組を見てみるものの、満面の笑みを見せる芸人や女優の顔を見ては、惨めになっていく心が感情を高ぶらせて、枯らしたはずの涙がまた溢れた。


深夜前に帰宅したタカちゃんは、めそめそしている私に駆け寄ると、そっと背中をさすってくれた。

本当は、笑顔で迎えてあげなければいけなかったのに。


けれどタカちゃんは理由を聞くこともなく、「明日、久々にデートしよっか」と言って、愛嬌のある笑顔を向けてくれた。



タカちゃんは恐らく、私が泣いている理由を分かっている。

けれどそれすらも包み込んでくれる優しさが、嬉しくて。

同時に、タカちゃん以外の男のために泣く自分が本当に情けなく思えて、申し訳無さばかりが積もっていった。

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