俺様紳士の恋愛レッスン
「……そうか」



低く威圧的だった声色が、静かなものへと変わる。

ただならぬ空気を感じて歩み寄ると、十夜はこちらに目配せして、私の頭にポンと手を置いた。



「分かった。情けねー声出してんじゃねーよ、気持ちわりーな。……あぁ。じゃーな」



十夜はスマホを下ろすと、暗くなった画面を暫し見つめ、徐に視線を上げる。



「産まれるってよ」



ふっ、と笑った十夜。

その表情は穏やかで、涙が込み上げるほどに、優しかった。



「……なんで泣くんだよ」

「だ、だって……」



俯いた拍子に涙が1つフローリングに落ちて、慌てて手の甲で拭う。


私も、この時を楽しみに待っていた。もちろん悲しいわけではない。

ただ十夜の表情を見たら、急に胸が苦しく、切なくなった。


長年の想い人に、子供が出来る瞬間。

十夜は今何を想い、どんな感情を殺しているのだろう。

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