俺様紳士の恋愛レッスン
「……ニット?」



独り言のように呟いた十夜は、赤色のギフトバッグから綺麗に畳まれたそれを取り出す。

顔の前に広げられたセーターは、カーテンのように彼の表情を隠した。



「十夜、スーツも鞄もポール・スミスだよね? 一応合わせてみたんだ、けど……」



ビジネスシーンで使えるようにと、シンプルなブラックを選んだのが面白味に欠けたのか。はたまた袖口に施されたブルーのアクセントカラーが気に入らないのか。

十夜は固まったまま、何も言わない。



「ご、ごめん! お気に召しませんでしたか!」



気まずい空気を笑って誤魔化すと、十夜は徐に立ち上がり、私に背を向けた。

そしてニットに袖を通し、手早く頭から被ると、袖口と裾を正す。



「……こんなん」



振り向き様にネクタイをきゅっと締め直した十夜は、



「お気に召さないわけ、ねーだろ」



お得意の、頬を染めた可愛い顔で言う。

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