俺様紳士の恋愛レッスン
「篠宮さん、少し宜しいですか?」



片柳さんは声のトーンを上げて、今朝と寸分も変わらない緩やかな笑みを作り、私を店の外へと誘う。

おろおろと狼狽える女性に軽く会釈をし、その背中を追うと、街灯もなく人影もない、ブロック塀に挟まれた細い路地へと導かれた。



「で、篠宮さんはなぜこちらに?」



向き合った二人の間に保たれた距離は、1メールとちょっと。

名刺を渡された時と同じ、パーソナルスペースにおいて、社会空間ギリギリの距離。



「えっと、帰り道にお店を見つけて、入ろうと思ったら閉まっててー……」



辿々(たどたど)しくなってしまう口調に、余計に焦りが増していく。



「なんとなく覗いてみたら、片柳さんがいて、それで……」

「それで?」



その、上げられた語尾が示す感情は。



「……怒ってます?」

「いいえ」



嘘だ。

作られた笑みは緩やかなのに、細められた目が違う。

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