俺様紳士の恋愛レッスン
腹の中で沸き立つ感情。

怒らせてしまったという恐れと同等、否、それ以上に膨張するのは、悔しさから来る対抗心。


当たり前のことなのだけれど、はっきりと蚊帳の外扱いされたのが、何故かものすごく嫌だった。



「面白いことをおっしゃいますね」



ふっ、という音と共に、綺麗な形の目が細められた。

暗がりの中に浮かぶ妖艶な笑みに、思わず足が竦(すく)む。



「確かに、貴女のプライベートは貴女のものだ」



そう言って、ゆっくりと破られようとする社会空間。



「あ……」



まずい、完全に怒らせた。

彼の歩調に合わせるように、じりじりと後退する。



「私への用件は何ですか?」



それでも尚、片柳さんは距離を詰めようと歩み寄り、私は反発する磁石のように後ずさる。


と、5歩目の半ばでかかとにコツンと何かが当たる。

振り返ると、そこには無機質なコンクリートの壁が広がっていた。

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