俺様紳士の恋愛レッスン
遂に均衡が破られる。

社会空間から個人空間を飛び越えて、構える間もなくやってきたのは、親密空間。

片柳さんは獲物を捕えるかの如く、壁に手を付き私の逃げ場を奪った。



「何が望み?」



綺麗な顔から笑みが消えた。



「俺に何して欲しいの?」



ほぼ真上から落とされる冷淡な視線、その距離僅か10センチ足らず。


清涼な香りが思考を狂わせて、心臓が、呼吸が、止まる。

怖い。

泣きたい、逃げたい。



――そんなことよりも先に。



「死ぬ」

「……は?」

「死んじゃうっ! そんなに顔近付けないで! ドキドキしすぎてまじで死ぬ!!」



悲痛な叫びに面食らったのか、片柳さんは私を解放すると、半歩後ろに退いた。



「い、いま、まじで心臓止まった……!」



バクバクと全身を駆け巡る脈拍に、涙が滲む。

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