俺様紳士の恋愛レッスン
「片柳さん、安易に近付かないで下さい! 呼吸困難で死んじゃいます!」

「……悪い」

「あぁもう、本気で死ぬかと思った……!」



こんな状況だというのに、ドキドキの本能が勝ってしまった。

イケメン至近距離の破壊力、恐るべし。



「……つーか」



低く唸るような声にはっとして、顔を上げた。



「なんで俺が謝ってんだよ……」



眉間にしわを寄せた片柳さんは、再びゆらりと私に詰め寄る。

暗闇の中のはずなのに、見えるはずもないのに、背後に感じるドス黒いオーラに、背中がピリッと震えた。



「クライアントだから丁重に扱わねーといけねーのに」



気圧されて後ずさるけれど、背中はすぐに壁に捕まり、間髪入れず片柳さんの腕が伸びて再び私を拘束した。

辺りの微かな光も遮断されて、濃さを増した闇の色。


あぁ、これが所謂『壁ドン』か。

なんてお気楽な考えも束の間に、華麗な謗言(ぼうげん)が投下される。



「お前、バカだろ」

< 47 / 467 >

この作品をシェア

pagetop