キミが笑う、その日まで
「キクの家、9年前に父親の会社が倒産して、その後父親は自分で会社を立ち上げたそうなんスよ。
それがまさかの大成功。
今やキクは誰も知らない人がいない、大きな会社の跡取り息子スよ」
如月が教えてくれた会社は、引っ越してきたばかりのあたしでも知っているほどの大きな会社だった。
きーくんがあんな大きな会社の、跡取り息子…。
「そして須藤真帆。
あの子もキクの家と同じぐらい大きな会社の娘スよ。
噂スけど。
あのふたり、いつか結婚するんじゃないかって言われているスよ」
きーくんと、真帆が…?
「まぁ本人たちに聞いても嘘だって否定されるだけスけどね。
あのふたりが婚約者だと言われても変じゃないぐらい、あのふたりは仲良いスよ」
「そうだったの……?」
「だから、キクを好きになるのは止めておいた方が良いスよ。
傷つくの、嫌だろおたくだって」
「…………ッ」
あたしの目に、涙が溜まってきた。
あたしが知らない、あたしがいない時に進んだ、真実。
どうしてあたしは、いなかったのだろうか…?
「…悪かったな変な話聞かせて。
だけどいつかは知るんだと思うスから…。
もう遅くなったし送るスよ」
自分の鞄とあたしの鞄を持った如月が、教室の扉を開けた。
「部活に入っていない奴は遅くまで残ると警備員に怒られるスよ。
あと“早く帰れ”って言うお化けも出るみたいスからね」
「…………ッ!?」
お化けが苦手なあたしは、急いで如月を追いかけた。