キミが笑う、その日まで
誰もいない、静かな住宅街を通っての帰り道。
あたしは如月と並び、無言で歩いていた。
「……如月」
「何スか?」
「…ありがとう、教えてくれて」
いつかはわかることだったから。
今のうちに知っておいても、良かったかもしれない。
「……あたし、幼い時からずっと、片想いしていたんだ。
結婚しようって言ったのも覚えているんだ」
「……まだ何も知らないワッパだったんスね」
「うん。
その時はまさか引っ越すなんてこともわかっていなかったから。
好きなことを好きなだけ、何度でも言えたんだ。
だけど今は言えないね。
あの時の約束覚えているって言葉も。
あの時と今のあたしは、違うんだね……」
「ワッパでも成長するんスね」
「きーくんは覚えていないんだろうな、あの日のこと」
「ワッパは忘れっぽいスからね」
「…さっきからわっぱわっぱ何よ」
「ガキの頃の話なんだろ?
じゃあワッパじゃないんスか?」
「確かに子どもだけど…。
何か同じことばかり言われると、聞いているのかって聞きたくなる」
「ちゃんと聞いているスよ」
……知ってる。