好きだからキスして何が悪い?

店長さんから頼まれた日は、世間で始まるお盆休みの初日。

文ちゃんの『外見、意識していきなよ!』というアドバイス通り、今日もメイクをして、髪の毛は下ろした姿で本屋へ向かった。


バイトとは関係ないことでドキドキしながら事務所へ入ると、すでに身支度を整えた如月くんがロッカーの扉を閉めているところだった。

あの日以来、久しぶりに見た彼に、緊張で心拍数が上がる。

うわー顔が強張っちゃう! 自然に自然に……!


「お、おはよう」

「……はよ」


ぎこちない笑顔で発した第一声だけど、チラリと私を見た如月くんはいつものように返してくれた。

それだけで、少し緊張が和らぐ。


「今日も、よろしくお願いします」


さっきよりは自然な笑顔で言って軽く頭を下げたけれど、彼はほんの小さく頷いただけで、無言で私の横を通り過ぎる。


……う、やっぱりそっけない。

でも、普通に挨拶できただけでもよかったよね。

まだ一日始まったばっかりだし、これからだ。うん。


少しだけ寂しさを感じながらも、自分を励まして支度しようと私もロッカーを開けると。

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