好きだからキスして何が悪い?
私を振り返るふたりは、にんまりと同じような顔で笑っている。


「ここからは別行動。お約束でしょ」

「大丈夫だよ。奏には“白い浴衣の眼鏡美人を探して”ってメールしとくから」

「そ、そういう問題じゃ……!」


あたふたしながら引き止めるも、「頑張って!」とガッツポーズを決めて、ふたりはそそくさと人波に紛れていってしまう。

なんですか、文ちゃん達のあの息ぴったりな感じは!

ていうか、まさかふたりきりにされるなんて!

嬉しいけど、ありがたいけど、めちゃくちゃ緊張……。


一気に不安になりながらあたりを見回すけど、まだ如月くんらしき人はいない。

目に入るのは、楽しそうな家族連れや友達同士らしき集団、仲の良さそうなカップルだけ。

私と如月くんも、今日はあんなふうに一緒に歩けるのかな……?


考えれば考えるほどドキドキして、いつ来るだろうかとそわそわしてしまう。

こうなったら早く来てほしいよ……!


浴衣が崩れていないかと気にしたり、前髪を何度も整えてみたりしながら、私はひとり彼が現れるのを待った。


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