好きだからキスして何が悪い?
──現在、午後7時半。
待ち合わせの時間は7時だった。
空はすっかり濃紺に染まって、三日月がぶらりと浮かんでいる。
赤い橋の手すりに寄り掛かった私は、賑わう通りから暗い空へと目線を上げた。
「遅いなぁ……」
ぽつりと漏れた声が、涼しくなった夜風にさらわれていく。
何かあったのかな。バイトが長引いてるとか?
でも、そんなに残ることはないって前に言っていたし……。
不安を抱きつつも、とにかく待つしかなかった。
しかし、それから10分、15分と経っても、如月くんが現れそうな気配はない。
小さな不安は、どんどん大きく膨らんでいく。
来る途中で、事故とかに巻き込まれたりしてないよね?
それか……もしかして、やっぱり私と行くのが嫌になった?
ここまで来て、私しかいないから怒っちゃったとか?
可能性としては、きっと後者の方が大きい。
悪い想像しかできなくて、不安よりも悲しさが大きくなっていく。
「おかしいなぁ……雨、降ってないのに」
あの時、ちゃんと『俺も付き合ってやる』って言ってくれたのにな──。