好きだからキスして何が悪い?
じわりと瞳に膜が張って、綺麗な三日月が歪んでいく。

期待した私がバカだったのかな……。

でも、義理堅い如月くんのことだもん。きっと約束を破るような人じゃないはず。


そう信じて、もう少し待ってみようと、まぶたを閉じて涙を押し止めていた、その時。

ぽんっ、と肩が叩かれた。

来てくれた……!?


「如月く──」


期待して振り仰いだ瞬間、私の顔からはすぐに笑みが消えた。

目の前にいたのは、まったく知らない男の人だったから。

顎ヒゲを生やし、たくさんのピアスを付けた、年上であろう彼の人相の悪さにギョッとする。


「キミ、ひとり?」


ニヤリと笑いながら聞かれ、背筋がゾッとした。

顔を強張らせつつ、なんとか答える。


「あ……えと、人を待ってて……」

「さっきからずっとここにいるもんね? 来ないんだ、その人」


ムカッ。

何気に地雷踏んでるんですけど?

一瞬怖さよりイラつきが上回って、ピクリと片眉を上げた。

そんなことには当然気付かない彼は、馴れ馴れしく私の肩に手を回してくる。

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