好きだからキスして何が悪い?
「よぉ、久しぶり」

「音哉……!」


短くなった髪の毛は色も落ち着いていて、顔つきはあの頃より柔らかくなった気がする。

けど、整った精悍な顔立ちは今も変わらず、男らしい逞しさをたたえていた。

その姿を見た瞬間、熱いモノが身体の奥底から湧き上がる。


「……今までどこで何やってたんだよ? どうして突然何も言わずに消えちまったんだよ!? 俺を……信頼できなくなったからか?」


つかみ掛かりそうなくらいの勢いで音哉に向かいながら、感情の波と同じように抑揚のある口調で言った。

悲しむような怒ったような顔をしているだろう俺に、彼は申し訳なさそうな笑みを浮かべる。


「ごめんな、ずっと連絡しないで。でも、奏を信頼してなかったわけじゃない。そんなはずねぇだろ」


諭すようにしっかりと言う声で、いくらか胸のつかえが取れた気がした。

音哉はひとつ息を吐くと、少し目を伏せて口を開く。


「……俺が学校辞めたのは、母親が倒れたせいだったんだ。手術しなきゃいけなくて、少しでもその費用の足しになるように働こうと思った」


その事実に、俺は掛ける言葉を見失ってしまう。

何か事情があったのだろうと思っていたけど、母親のためだったとは……。

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