好きだからキスして何が悪い?
ずっと音信不通だった音哉と、こんなふうに突然話ができてんだぞ?

そんな簡単に信じられるかよ……!


『悪いな、急に電話して驚かせて。元気だったか?』

「……ぼちぼち」

『そ。まぁ死んでなきゃ何でもいいわ』


ざっくばらんな言い方に、一緒にいたあの頃を思い出して思わず笑った。

こういう人だったな……大胆不敵で、おおらかで。


「相変わらずだな」

『いや、俺もだいぶ落ち着いちまったよ。……今、出てこれるか?』

「今? 大丈夫だけど……って、どこにいんの?」

『お前んちの前』

「はぁ!?」


まさか家の前にまでいるとは思わず驚愕。

慌ててカーテンを開け、二階のこの部屋から外を見下ろすと、玄関から少し離れたところに人影がある。

夕焼け色に染まった白いTシャツを着たその人の、懐かしい顔がこっちを見上げて、ニッと口角を上げた。


『降りてこいよ』


そう言われた俺は、迷うことなくすぐさま部屋を出た。

階段を駆け降り、キッチンにいる母さんに「ちょっと出てくる」と声を掛けると、返事も聞かずに玄関に向かう。

外へ飛び出すと、ずっと会いたかった兄貴が優しく微笑んだ。

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