好きだからキスして何が悪い?
好きな人のあんな場面を見たら、ショックを受けて当然だ。たとえ、下心がなかったとしても。

眉を下げる私だけど、文ちゃんは何も気にしていないように笑う。


「なんだ、そのこと? 菜乃が謝ることじゃないでしょ」

「それだけじゃないよ。琉依くんとふたりで、デートまがいのことした時だって……」


文ちゃんはいつも、好きな人が他の女子といるのを、ずっと間近で見ていたんだ。辛くないわけがない。

それなのに、何も言わずに私の心配ばかりしてくれて……。


「ごめんね、文ちゃん。今までずっと辛かったよね」


心苦しくなりながら謝ると、彼女は差し掛かった横断歩道の赤信号を眺めて言う。


「まぁ、辛くないって言ったら嘘になるけど」

「うぅぅ……」

「泣くな」


苦笑する文ちゃんは、涙目になる私の背中をぽんと叩いた。


「どれも菜乃のせいじゃないから! 今だからぶっちゃけるけど、琉依も菜乃のことが好きだったんだから、しょうがないじゃん?」

「…………へ?」


今、さらっと言ったけど……

ものすごく衝撃的な発言じゃなかった!?

< 250 / 278 >

この作品をシェア

pagetop