好きだからキスして何が悪い?
教室に着くと、何やら中からざわざわとした声が聞こえてくる。
皆、何かを遠巻きに見て話しているみたい……。
不思議に思いながら文ちゃんと中に入り、自分の席に向かう途中で、ある人の異変に気付いた私は目を丸くした。
私の隣の席に、いつもの地味男子の姿はなく、代わりにとんでもないイケメンが座っている。
無造作だけどキマっている黒髪。
スッと通った鼻筋も、切れ長の瞳が伏せられているのも、眼鏡をしていない今、はっきり見える。
キラキラとして見えるのは、日差しを受けているからじゃない。
如月くんが、素のままの姿でそこにいるから。
「き、如月くん……!?」
思わず声を漏らすと、バッグから教科書を取り出していた彼の瞳が私を捉える。
そして「おはよ」と、いつも通り無愛想なままで挨拶した。
足を止めてしまっている私の周りでは、男子も女子も動揺しまくっている。
「えぇぇ、アイツが……如月!?」
「本当にそうなの? 転校生じゃなくて!?」
「ううう嘘でしょ!? こんなイケメンなんて……!」
困惑と驚きの声を耳にしているはずなのに、彼は平然としていた。