好きだからキスして何が悪い?
私もびっくりなんですけど!

地味な姿をやめるなんて、一言も言っていなかったから。

まぁでも、パープルのことはけじめをつけたらしいし、もう自分を偽る必要はないんだもんね。


私も、これまでの自分とはサヨナラしなくちゃいけないかな……。

いまだに健在な三つ編みの毛先をいじって考えていると、廊下から現れた野崎くんがこっちに向かってきた。


「如月くん、休み明け早々ごめん! ちょっと劇で変更があって……あれ?」


野崎くんはまじまじと如月くんの顔を見た後、キョロキョロとあたりを見回す。

そしてもう一度、如月くんを見つめて問い掛ける。


「……どちら様で?」

「変な要求すんじゃねぇだろうな? さっさと言え」

「…………」


無口な彼からは想像しなかっただろう口調に、ぽかんとして固まる野崎くん。

数秒後、「ぅえぇーーっ!?」という彼の叫び声が、教室中に響き渡った。


結局、野崎くんは変更を伝えるどころではなくなってしまい。

それからすぐに担任がやってきて、皆もまだ動揺しながら自分の席に戻っていった。

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