好きだからキスして何が悪い?
その日のお昼休み、トイレに入っていた私は、出ようとドアノブに手を掛けた瞬間、聞き捨てならない会話が聞こえてきて動きを止めた。


「地味同士で劇やらせるの、面白いと思ったけどちょっと失敗だったかもねー」

「如月くんがあんなイケメンだなんて思わなかったもん! しょうがないよ」


うわ……絶対うちのクラスの子だよね。さっき如月くんを取り巻いてた子達かな?

早く行ってくれないと出られないよ!

でも、彼女達の話は終わる気配がなく、私の耳には否応なしに聞きたくない話が入ってきてしまう。


「でも劇のおかげで仲良くなったっぽいじゃん? 冴島さんと最近よく話してるし」

「えー、如月くんってああいう子がタイプ?」

「趣味悪いよねぇ。ま、あんな地味な格好してた変わった人だし、似た者同士でいいんじゃない」

「もしかしたら遊びかもよ?」

「ありえるー」


きゃはは!と笑う声が遠ざかっていく。

ようやく行ってくれたみたいだけど、私は動けないまま。

彼女達の悪口は少なからずショックで、気分が重く沈み込み、大きなため息を吐き出した。

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