好きだからキスして何が悪い?
「……如月くんって、やっぱり優しいんだ」


思わずぽつりと独り言と笑みをこぼすと、彼は「あ?」と低い声を出して私を見下ろす。

眼鏡の奥でギロリと睨んでいるのがわかってギクリとする。


「ボソボソほざいてないでどこの店寄ってくか早く言え」

「ご、ごごごめんなさい!」


あぅ、やっぱり怖いです。


とりあえず、本屋から10分ほど歩いたところにあるドラッグストアに行くことを伝え、ふたりで歩き始めた。

こうやって如月くんと並んで歩くなんて初めて。

今になって思うけど、今日は彼とものすごく距離が縮んだ一日だったな……。


忘れていた淡い恋心が戻ってきてドキドキし始める。

だってなんか、さっきから視線を感じるような気もするし……。

いや、絶対気のせいだけど。

意識しすぎて何を話したらいいのかわからず、微妙な距離を保ちながら、お互い無言で足を進めていた。


しかし、ふいに如月くんが口を開いたかと思うと、こんな発言が飛び出す。


「お前の私服……日曜午後6時からやってる国民的アニメに出てきてもおかしくないな」

「えぇっ」

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