笑顔の裏側に
「え?じゃあ、お前は白木のこと好きじゃないの?」

悠が驚いたように立ち上がった。

その時にお茶碗に置いた箸が軽快な音を立てて机に転がった。

「当たり前でしょ?私には悠がいるん‥

そのまま横から覆い被さるように抱き締められた。

口を開こうとした時、耳元で、

「よかった‥。」

そんな掠れた声が聞こえて。

その声があまりにも心から安堵した声だったから。

思わず口を噤んでしまった。

その代わりに悠の腕にそっと手の平を置く。

「優美。」

小さく返事をした。

「あの時した約束を俺は守れそうにないよ。」

あの時の約束がどれを指しているのか、いまいち掴めない。

悠との約束はたくさんあるから。

「たとえお前に好きな人ができても、俺はお前を離したくない。」

その言葉を聞いて思い出すのは、悠に告白された帰り道のこと。

あの時はまだ私たちは付き合ってなかった。

だから付き合った今はもう無効のものだとばかり思っていたのに。

まだ悠がその約束を気にしていたなんて。

それも全て私がちゃんと自分の気持ちを伝えてこなかったからだ。

だから悠を不安にさせてしまった。
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