笑顔の裏側に
しかし次のバイトの日。

越川先輩と顔を合わせることになってしまった。

店内にお客さんがいたため、まだ特に何も言われてないけど、私の中で警報が鳴り響いていた。

レジもいつも以上に荒いし、何しろ座っている今も鋭い視線を感じる。

きっとものすごい勢いで睨まれているのだろう。

怖くて顔を上げられず、テキストを見つめてその場をやり過ごす。

これほどまでに一刻も早くここから逃げ出したいと思ったことはない。

こういう時に限って、時間は全然進まない。

ため息を吐きそうになったその時、視界が少し暗くなった。

反射的に顔を上げてしまうが、そうしてしまった自分が今は恨めしい。

「麻生さん、ちょっといいかしら?」

「はい。」

周りを見渡せば、お客さんは誰もいない。

そしてカウンターにも。

要するに2人きりだ。

まだ勤務時間中なのに話しかけてきたのはそういうことかと納得する。

我慢できなくなったというところか。
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