君までの距離
足元を見ながらゆっくり歩き出すと、狭い道の半歩先の崖がわを高遠さんが歩いてくれた。
「みんな俺達が居なくても、自分の仕事がわかってるんだよ。もちろん俺だって皆の努力を無駄にしないようにやらなくちゃいけないことがある」
頭をひとつ振って、振り返った高遠さんはアタシを見た。
「なんでいつも想像を超えたとこにいるのかなぁ」
「アタシがですか」
「CMのスポンサーとは知り合い?」
それは尾上さんを指していることに気づく。
「スポンサーは自分の会社です……尾上さんはお隣りの部署で、高遠さんの資料を貸してあげた仲です。CMの候補に高遠さんがいるって聞いてから、CM撮影に立ち会わせて貰えるまで、楽しみにしていたんです、アタシ」
それを聞いて高遠さんは微妙な顔をした。笑いたいような怒りたいような、なにか堪えるように口を結んだ。