恋人境界線
扉が開かないかそわそわしていると、突然、正面から春臣の手が伸びてきた。
「志麻だけ、白いのな」
「…っ!」
首筋にそっと、人差し指が触れる。一瞬熱が伝わってきたように、ぞくっとする刺激が走った。
その部分を急いで手で押さえて、あたしは顔を背ける。
「志麻、酔ってる?」
「…よ、酔ってな」
言い掛けて、あたしは口をつぐんだ。
いっそアルコールのせいにして、思ってることを全部言えたらどんなに楽か。
「……」
「志麻?」
どうしてあたしは友達以上になれない?
キスしたり、思わせ振りなこと言ったりするのに。
あたしたちは友達の境界線をとっぱらえない。
ふざけてるの?
からかってる?
「…春臣はさ、」
「ん?」
聞き返した春臣の顔がまともに見られなかった。
ペンションの廊下のライトが、暗めで良かった。
ずっとパラソルの下に居たというのに。あたしの頬も日に焼けたように、熱い。
「なんであたしの友達とばっか付き合うの?」
周りを取り囲む、夜の静寂。
お互いの息遣いだけが、微かに聞こえた。
「断れば、失うと思った」