恋人境界線
夜には恒例の飲み会が行われて、空き缶が部屋中に敷き詰められた頃、みな各々の部屋に戻った。
同室の潰れた友達をベッドに寝かせてから、散歩でもしようとあたしは部屋を出た。
チューハイをちびちび飲んでただけなのに、アルコールが効いている。
ぐらぐらする頭を抱えて廊下を歩いていると、通り掛かった部屋から声が聞こえてきた。
「……るおみ、……」
吐息を含んだ薫の声が、扉の隙間から漏れる。聞き逃せなかった自分が憎い。
早くその場から立ち去りたくて、足を進めたとき、その扉が開いた。
「は、春…」
驚いたあたしに、相手が“シッ”と口元で人差し指を立てて見せた。
そのまま後ろ手に扉を閉める。
「…っ」
まさかこんなにタイミングよく出てくるなんて…
「日焼け。すっげえの」
部屋の前から少し離れ、春臣はTシャツをめくった。真っ赤になった腕や腹、背中をさする。
「痛くて寝てらんねぇ」
太陽に焼かれた跡は、まだ熱が引けていないようだった。
確かに痛そうだけどそれよりも、部屋の中に残された薫の方が気になる。