恋人境界線


――失う、って
恋人を?友達を?

それともなに、あたしのノートを?
友達の告白を断って気まずくなれば、あたしがノートを貸さなくなるとでも思ったの?まさか。


「意味わかんない。ノートなら貸すし、ていうか別にあたしのじゃなくたって、真面目に講義受けてる人は他にもいるじゃない」


適当なことを早口でまくしたてると、隣からは低いため息が聞こえた。


「鈍感だな」
「……は?」


ぽかんと口を開けて、春臣が言った言葉を頭の中で繰り返す。
その間に、目の前が一気に暗くなって、春臣たちの部屋の扉が見えなくなった。

焦点が合わないほど、春臣が顔を寄せたからだ。


「アルコールのせいにできる?志麻」
「な……っ!」


二度目の口付けも、前触れなんてなかった。

瞬きする余裕もない。
目を見開いたまま、相手に掴まれた肩の重みと、奪われた唇の熱さと。
焦がされた胸の痛みが、身体中を駆け巡る。


「……っん」


顔の角度を変えて、僅かに起きた唇の間から息が漏れたとき、薫しかいない二人の部屋から、微かに物音が聞こえた気がした。

心に芽生える罪悪感。


「…っや、めて」
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