恋人境界線
目が覚めたときには、豪雨も暴風もすっかり消えていた。嵐は、昨夜のうちに過ぎ去ったらしい。
春臣に抱かれた後、どういう流れで眠りについたのかはよく覚えていないけど、あたしはきちんとスエットの上下を着ていた。
「……ああ、そうだよ」
不意に聞こえた春臣の声に、耳を澄ませる。
「俺の気持ちは決まってたんだよ」
なるべく体を動かさずに目だけで部屋を見回すと、キッチンに立った春臣は、電話をしているようだった。
「お前に殴られる、前から」
すぐにぴんときた。
相手は、真島くんだ。
昨日、狸寝入りをした春臣を責めておきながら、あたしも寝た振りをきめこむ。
「もう、薫を泣かせねぇよ」
薫を、泣かさない。
真島くんにきっぱりとそう宣言したということは。「…っ」一度抱いたことで、あたしとの関係は清算されたということ?
ひたひたと、裸足で歩く音がこちらに近付いてくる。
泣いても、なにも解決しない。
それでも構わないって、昨日、思ったじゃない。
「志麻、起きたの?」