椎名くんの進級

 さて、現実に壁ドンで告白出来るかどうかは置いといて、何にしても、椎名と先輩を2人きりにしてやらねばならない。俺達は雑談がてら作戦を練りはじめた。

 今回、椎名は本番で装置の操作をするので、最近は役者と一緒に舞台に行く事が増えた。活動が終われば大野先輩は神井先輩と一緒に帰ってしまう。ついこの前までなら、先輩と2人きりで作業するチャンスはいくらでもあったのに、舞台装置がほぼ完成してしまった今、その機会はほとんどなくなってしまった。

 役者が帰った後に相談があるとか言って、大野先輩に残って貰っても、多分、神井先輩がその辺で待ってるだろうし、神井先輩の事だ。同席するとか言いだすかもしれない。どう考えても告白なんて無理だ。

 だったら、神井先輩の不在を狙いたいところだが、神井先輩は脚本家で演出だ。今はもう春休みで、引退公演は新学期が始まってすぐだった。この後、神井先輩が不在の活動日などほぼないだろう。どう考えても時間が足りない。
 ならば、俺達が椎名の為に神井先輩をなんとかするしかない。みんなで無い知恵をしぼってあーだこうだと机上の空論を展開していた。

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