坂道では自転車を降りて
案の定、数日後、理科室での実験の後、教室に帰ろうとすると、美波に冷やかされた。

「神井くん、ちゃんと声かけてたんじゃん。」
「何の話?」
「その目つきの悪さで痴漢を撃退したって、噂になってるよ。」
「そんなことは、してないよ。」
あいつら。やっぱり話してんじゃねぇか。

「謙遜しなくても良いじゃない。」
「いや、本当にそれは俺じゃないよ。」
「でも痴漢を見たって言ってたじゃない。」
「見たけど、何も出来なかったって言ったよな?」
「そう言えばそうね。」
「そうだよ。俺は、痴漢を追っ払ったりしてない。」
「そうなの?っていうか、私を睨まないでよ。」
睨んでねーよ。目つきが悪くて、悪かったな。俺は美波から視線を外して言葉を続けた。

「そーゆー不確かな噂を広めるなよ。迷惑だ。それに、その痴漢にあった子だって、噂を聞いたら嫌な事を思い出すだろ。俺は実際、何も出来なかったんだ。本当に、、何も。」
思い出したら悔しくて、ギリギリと奥歯を噛んだ。

「これ以上、彼女を苦しめるなよ。」
「でも他の学校の子なんでしょ?」
「。。。。」
俺の剣幕に驚いたのか、美波はそれ以上は何も言わずに逃げていった。
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