坂道では自転車を降りて
「何か用?」
「いえ、いつも遅いから何やってるのかと思って。もしかして、次の本とか、書いてるの?」
「新しい本を書くのは自宅だ。活動日にはそんな暇ないから。」
「そう。次の本はどんな本になりそうなの?」
「ごめん。ちょっと黙っててくれないか。」

 稽古の予定について、考え事をしながら、鉛筆を弄んでいたら、鉛筆が飛んで行ってしまった。拾おうとすると美波が先に拾った。受け取ろうとすると、美波はその鉛筆を胸元に差し込んだ。豊満な胸の谷間から、鉛筆が覗く。これを俺にとって欲しいのか?とらせてどうするつもりなのだろう。彼女は勝ち誇ったように微笑んだ。
 俺は牛をイメージさせるバストを凝視していた。牛乳が沢山しぼれそうな乳には、実際には何が入っているんだろう。この乳を思いっきり揉みしだいてやろうかとも思ったが、そんなことをしたら後が面倒くさそうだ。結局、俺は別の鉛筆を探すために引き出しを開けた。

「ふふっ、触ってもいいのに。」
美波はあごに手をあて、挑発的に笑った。

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