坂道では自転車を降りて
 体育館ではまだ演劇部が稽古をしているし、運動部もいる筈だ。廊下の窓から南棟の窓を眺めると、音楽室にも明かりが灯っていた。
「音楽室にも誰かいるみたい。それに川村くんはまだやる事が残ってるんじゃないの?」
「そうだな。」

でも、もう高橋も帰してしまった。
「ありがとう。私、帰るよ。」
「いや。」
俺は倉庫の奥からギターを出した。
「あぁ、それやっぱり川村くんのだったんだ。」
「最近、昼休みにみんなで練習してるんだ。本番近いからね。ギターでもいい?」
「うん。」
笑いかけると、彼女も笑顔を見せてくれた。
「よし。こっちだ。おいで。」

ギターを背負って先に立って歩く。彼女は鞄を持ってついてきた。
「屋上?」
屋上も悪くないが、屋上は鍵が閉まってるはずだ。
「階段教室。」

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