坂道では自転車を降りて
「あぁ、ごめん。そう言えばまだだったね。」
「いいえ、あの、ご迷惑ではありませんか?」
「ねぇ、その丁寧語というか、敬語みたいなやつ。やめない?一応年上だけど、部活じゃないし。」
「えっ?」

彼女は一瞬きょとんとした。
「もうちょっと普通に話して欲しいな。」
「はい。やってみます。」

もしかして、これが素なのかな。だとしたらとんでもないお嬢様だ。俺とは世界が違う。そうなると今度は貴重なサンプルのような気がして、急に彼女に興味がわいて来た。普段はどんな生活をして、友達とどんな話をするんだろう。

 その後は少し話も弾むようになった。彼女はかなり上機嫌でいろんな話をしてくれて、半分も分からなかったが、なかなか面白かった。連絡先を交換して別れると、その日のうちにメールが来た。お友達から始めましょうというやつだ。それはそれで悪くないような気もしたが、そうすると、そのうち彼女と付き合って、2人だけでデートしたり、キスしたりするようになるのだろうか?悪くはないが、何か違う気がするな。

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