坂道では自転車を降りて
「部室、一緒に行く?」
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 体育は柔道だった。オリンピック競技とはいえ、世間一般では既にマイナーで危険なスポーツを、なんだって道着まで着て全員でやらにゃならんのか、理解に苦しむ。柔道部の飯塚が俺を投げるのを楽しみにしているみたいで、憂鬱だ。
 2人組を組まされる。案の定、飯塚が俺の相手になった。予想に反して、いろいろ親切に指導してくれる。主に受け身。後で投げるつもりだからか?

「お前さ、最近、大野さんと仲良くしてるだろ。」
「そんな話、どこで聞いた?」
「してるだろ?」
「。。。。」

 盛大に投げられた。が、しっかり受け身を教わったからか、手足は痛いが大したことはなかった。ほっとする。また組む。
「なんか、進展あった訳?」
「多少。」
「隠すなよ。」
「別に隠してはいない。」

今度は脚をすくわれた。痛ってぇなぁ。もう少し手加減してくれよ。そのまま寝技で締められる。
「昼休み。図書室でイチャついてるって?」
雑談してるだけだ。イチャついてなんかないし、それは以前からそうだ。
「ちゃんと、言えよ。卑怯だぞ。」
「。。。。。」
そんなギュウギュウ締められたら、言いたくても言えねぇだろ。
「ほら、早く降参しないと、落ちちゃうぞ。」
うるへー。なんでお前に話さにゃならんのだ。

「くっそ。やっぱりこうなったか。なんとなく予想してたけどな。」
言いながら飯塚は力を緩めない。おい、そろそろやめてくれないと。。
やばい。気持ち良くなってきちゃったぞ。あ。
俺の意識は落ちた。

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