坂道では自転車を降りて
「そんな言い方。信じない俺が悪いっていうのか？」
「違う。君が私を信じられない理由もわかってる。本当に大事なのは、何があったかじゃなくて、どんな気持ちでいたかだもの。だから、昨日までは信じてたんでしょ？」

　坂は終わっていたが、俺たちは歩き続けた。ふと、彼女は道を外れ、公園へ入ってベンチに座った。俺も自転車を停めて横に座る。

「これで終わりにするから、最後のお願い。キスして。」
彼女は言った。突然の申し出に戸惑う。正直そんな気分じゃなかった。だが、他に何をすればいいのか分からなかったので、言う通りにした。
　唇にそっとキスをすると、初めての時と同じように柔らかい唇は甘い香りがした。でも嬉しくもなんともなくて、単に唇が触れただけだった。

　彼女は「もっと」といった。もう一度唇をよせると、彼女は俺の唇に何度も吸い付いて、何度目かに噛み付いた。

「てっ。」噛み付かれたのは俺の方なのに、彼女は悲しそうな瞳で俺をみる。
「もっと！」怒ったように言われ、何がなんだかわからない。
「何、どうしたの？それに終わりって、俺まだ納得できない。」
俺が言うと、彼女の目にまた涙が溜まり始めた。
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