坂道では自転車を降りて
大丈夫だよ。
 公園に戻ると、さっきのベンチには中学生くらいの男子が集まって騒いでいた。他に犬を散歩させている人がいるだけで、彼女はもういなかった。
 俺は彼女の家までの道を自転車で追いかけた。自転車でなら、十分追いつけるはずの距離があったのに、彼女の家の前まで来ても、彼女の姿を捉える事はできなかった。行き違ったのか?もう一度公園までの道を引き返す。
 おかしい。何処へ行った?それとももう自宅にいるのか?携帯に電話をかけてみる。随分長くコールしてから、彼女は電話に出た。

「はい。」
息づかいで、まだ歩いているとわかる。
「今、どこ?」
「。。。ごめんね。」
「よかった。戻ってみたらいないから。」
「大丈夫だよ。何?」
「まだ、外だよな?近くにいるはずなんだ。家まで送らせてくれない?」
「別に、いいよ。ひとりで帰れるから、、あっ
  『いってぇっ。気をつけろよっ。』
  『すみません。』
  『携帯しながら歩いてんじゃねぇよっ。』
  『ごめんなさい。』
  『なんだ? お前、泣いてんの?』
  『いえ。』
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