坂道では自転車を降りて
  『可哀想に。俺が、慰めてやろうか?』
  『。。。。』
  『いいじゃん。電話の相手は彼氏?別れ話?』
  『。。。。やっ。ちょっと。』
  『高校生?細いなー。もっと食わねぇと。』
  『やっ。触らないで。』
  『ほら、こんなに軽い。持ち上がっちゃうじゃん。』
  『離してっ。いやっ。。』
  『たくさん食べないと、おっぱい大きくならないよ。』
  『やめろっ、触るな、ばかっ。やだっ。』」
携帯の向こうでガサガサという音と、彼女の悲鳴が聞こえる。なんだよこれ。

「おいっ。大野さんっ。今どこ?何してんの?おい。」
携帯からは雑音ばかりで何がなんだからからない。応答もない。こんなの嘘だろ。

 慌てて周囲を見渡す。どこだ。この通りじゃないのか?どこだ?どっちだ?自転車を走らせる。心臓が異常な早さで鼓動を刻む。耳のすぐ横まで心臓が肥大したかのように、体中が鳴り響いた。

 なんで、あんなところに置き去りにしてしまったんだ。何をやってんだ。俺はっ。大野さんはどこだよ。今、どこにいるんだ。早く、早く探さないと。。。
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