坂道では自転車を降りて
終業式の放課後
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 終業式後、部員は部室の片付けと掃除の為に集まった。倉庫や部室を掃いて、仮置きしてある大道具を分解し、綺麗に運び入れる。使った衣装は本人が持ち帰り冬休み中に洗って戻す。ノートや台本も整理された。彼女は裏方組の一年と一緒にテキパキと働いた。

 作業は1時間程で終わり、原がひと言締めて、解散となった。彼女は裏方の1年とノートを片手に何やら話し込んでいる。裏は冬休みの宿題が出るらしい。お疲れさまだ。俺は部室に新しく設置されたソファに腰掛けて、堂々と彼女を待った。このソファは今回の舞台の為に家具屋の廃品から貰って来た備品だ。今日別れるかもしれないのに、公認と言うのも変な話だが、もう隠す必要はない。

10分弱で話は終わり、裏方の一年はそれぞれ帰って行き、廊下にたまっていた女子もいなくなった。静かになった部室は、寂しいような、落ち着くような、不思議な雰囲気がある。とりあえず寒い。

「お待たせ。お腹すいた?」
「うーん。でも、弁当ないし。」
「私、ちょっとだけ持って来た。」
彼女はそういって鞄から大小二つのおにぎりを取り出した。

「どうしたのこれ?」
「作業が長引くとお腹すくだろうなと思って。」
言いながら、大きい方のおにぎりを投げてよこすと、俺から少し離れた席に座った。二人でほおばる。腹減ってるし、不味いってほどじゃないんだけど。なんだろう。不思議な味。っていうか、梅干しがデカっ。それに酸っぱすぎる。バランス悪すぎだろ。彼女の小さなおにぎりにも同じサイズの梅干しが入ってるんだろうか。
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