坂道では自転車を降りて
君が、あんまり可愛くて
しばらく、そうやって抱き合っていたが、
「お腹空いたね。」
高校生男子がおにぎり一個では、満足できるはずがなかった。
「もう帰る?」
彼女が訊ねる。しかし、それも惜しいと思った。また3時くらいなんじゃないだろうか。確認すると3時前だった。
「とりあえず、食べ物、買いに行くか。」
近所のコンビニで、何か買って来て食べよう。もっと、彼女と一緒にいたかった。

 彼女が泣きはらした腫れぼったい目で出歩くのを嫌がったので、俺が1人で買い出しに行く事になった。彼女にはおにぎりを1つと紅茶を買ってくるように頼まれた。終業式の日の3時過ぎ、コンビニの弁当棚は空っぽで、おにぎりも残っていなかった。仕方ないので、適当にパンを見繕って買い、足早に戻る。早く彼女に会いたい。暗く寒い部室で1人で待ってるなんて、なんだかこっちが切なくなってくる。

 部室に戻ると、彼女は部室にあった漫画を読みながら笑っていて、なんだか拍子抜けしてしまった。本や漫画を読むのは、泣いた後の彼女なりの儀式らしい。すっかり元気になって、いつもの彼女だ。俺が買って戻ったパンを見て、彼女は本当にパンを1つだけ手に取った。

「それだけで足りるの?」
「こんなに食べるの?」
声がかぶって、笑ってしまった。
「昼飯まともに食べてないんだから、普通だろ?」
「でも、もう3時だよ。そんなに食べたら夕ご飯食べられなくならない?」
「ぜんぜん。普通に食えると思うよ。」
「ふーん。でも太りそう。」

 そっか、女子はそう考えるのか。彼女といるといろんな発見がある。考え方も感じ方もあまりに違うのでびっくりする。でも、不思議と気が合わないとは感じない。
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