坂道では自転車を降りて
 俺は近くにあった鉄棒にぶら下がった。背の高い大人用の鉄棒だ。ぶらぶらと揺らして、逆上がりで上に上がると「おおっ。さすが。」彼女が感嘆の声を上げた。くるりと回って降りる。どうだ!得意げに彼女を見ると、彼女は笑顔で手を叩いた。

「よしっ。」
突然言うと、彼女も鉄棒に飛びついた。負けず嫌いだな。女子が出来るわけないのに。内心笑う。だが、彼女はぶらぶらと揺らしたかと思うと、いきなり蹴上がりで鉄棒の上に上がった。体育の時間に男子がした時と同じように鉄棒がグラグラ揺れた。そのまま身体をひねって鉄棒の上に座って俺を見下ろす。俺は目を剥いてしまった。今の現実だよな??蹴上がりなんて男子でもできないやつの方が多いぞ。
「鉄棒、、得意なんだね。。っていうか、実は運動神経良いんだ。」

 外見からは全く想像がつかなかった。ふわふわの長い髪におっとりした表情。気弱そうな目。長めの制服で、図書室が似合って、走るところなんて想像がつかない。でも実際は、控えめでもなんでもないことも、もうよく知っていた筈だった。

「そんなことないよ。普通だよ。女子の方が体重が軽いから、体操系は有利なんじゃない。普段はみんなスカート履いてるからやらないだけで、出来る子は出来るよ。」
 言うと彼女は後ろ向きに回ってアクロバティックな動きでくるりと飛び降りた。俺より全然すごい。

「そうなんだ。」
絶対、違うと思うけど。。。2階の部室の窓から降りられるって、もしかして、そういうやり方?ジョーってあだ名は、そういう意味もあるのかな。
「でもその、もうやめてくれない?」
「なんで?」
「なんでも。」
外見とのギャップが半端なくて、見てて辛いんです。
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