坂道では自転車を降りて
君の知らない所まで
「何?どうしたの?これくらいで泣くなよ。」
「やっぱり、私、邪魔ばかりしてる。」
「違うよ。そうじゃない。」
「ごめんなさい。迷惑かけたくないの。振り回したくないの。やりたいこといっぱいある君が、私の為に沢山時間を割いてくれてるのもわかってる。だから、もう帰る。」
違うだろ。何言ってんだこいつは。いつのまに、なんでこんな事になったんだ?
でもここで言い争っても、多分どうにもならない。

「。。。。わかった。乗って。」
「うん。」

 俺は彼女を乗せて走り出した。どうするんだ。このまま家に帰すのか。そんなの、出来るわけない。でも、
「あぁ、もう。せっかく我慢してたのに。。もうどうなっても知らないぞ。」
「どうなってもって?」
「泣きながらやめてって言われても、止まれなくなるってこと。」
「止まれないとどうなるの?」
「君の知らないところまで行っちゃうと思う。」

 公園なんかに連れてったら、きっと、彼女が帰るとか言って、逃げ回るんだ。そんで、俺が捕まえて、彼女が泣いて、俺の理性がぶっ飛んで。。。絶対やっちゃう自信がある。どこか、2人で話せて、俺がおかしくならないところ。俺はただバス通りを走り続けた。彼女の家も自分の家も通り過ぎた。

「帰るんじゃないの?」
「そういう意味じゃないよ。」
「どこ行くの?」
「俺にもわからない。」

 坂道を登ると息が切れてきた。きつい坂についに自転車が止まる。高架になった大通りの歩道に俺達はいた。目の前にも下にも沢山の車が、びゅんびゅん走っていた。彼女が自転車から降りる。
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