坂道では自転車を降りて
ほんっと無防備に寝てるなぁ。
 3学期が終わり、春休みに入った。舞台もほぼ出来上がった。あとはひたすら稽古だ。今回は舞台装置にも仕掛けがあるので、早めに舞台装置を運んでの練習が始まった。

 部員が入室し、ドアをピシャリと開けるたびに部室の本棚の棚板が外れて落ちる。本棚の裏に裏方がひとり隠れて棚板を外したり戻したりする。衣装ケースから突然、ドラキュラよろしく登場する部員。前半は単なる俺達の日常だ。演劇部が楽しそうだという印象が着けば新入部員も増える。楽しい日常に紛れ、心の奥に抱える不安や闇を持て余す俺達。

 心の闇に言及した台本を書いた部員に、辛辣な批判が浴びせられる。共感する部分を持ちながら、同意する勇気のない自分に悩む部員。既成の脚本を使えば、社会の期待通りの自分を演じていれば、失敗しないし、評価を得られる。けれどそれで良いのか?でも失敗はしたくない。やりたいのか?やりたくないのか?やるべきなのか?やめるべきなのか?最後は結論を出さずに終わる。結論を出すのは来年の部員達だ。
  
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