坂道では自転車を降りて

帰り道、織田と話す。
「今日は、ありがとうございました。」
「彼女にモデル頼んだ事、なんで、俺に黙ってたの?」
「言ったら、ダメって言うでしょ。」
「あたりまえだ。」
「だからですよ。でも、隠してたわけでもないですよ。」
織田は悪びれずにいう。

「なんで、多恵なの?他にいなかったの?」
「一番、頼みやすかったってのが実際のところです。もちろん、容姿も気に入ってますし、俺に気がないってのも良かった。それに、先輩は絵を描くから、構えないで素直に撮らせてくれそうだと思って。一応演劇部員でもあるし、彼女はそういうところ器用だから、カンが良さそうだと思ってたんですけど。」
「イマイチだったのか?」
「いえ、今西達か、神井先輩か、どっちか分からないんですが、他人がいるとやっぱりダメみたいだったので。。。それで2人でやらせてもらいました。
 その時はホントもうすごい撮りやすいっていうか、素直に気持ちを乗せて来てくれて、何気ないポーズがすごいグッと来る感じで、期待以上でしたよ。」
 興奮気味に話す。なんだよ、こいつ。俺より多恵の事を分かってるみたいな顔して。。。

俺が憮然とした顔をしていたら、気付いて笑った。
「安心してください。もうやりませんよ。危ないから。笑。」
「。。。。」
危ないって、、どういう意味だよ。
「心配ですか?俺にとられないか。」
「べつに。」
「大丈夫ですよ。俺にはそんな気ないし、大野先輩の方にだってないですよ。分かってますよね?」
「お前に言われなくても、分かってるよ。」
ただ、分かってても、どうしようもないこともある。

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