坂道では自転車を降りて
送るから、すぐ帰れ。
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 そうしようと思えば、毎日だって一緒に勉強できた。俺達は勉強する以外にやることがないからだ。2人ともそれぞれ別々の予備校の夏期講習をいくつかと、彼女は他に学校で行われる英語の補講を受けていた。公立の進学校であるウチの学校にも補講があったという事実にも驚いたが、彼女が補講を受けなければならない成績をとったということも、かなりショックだった。

 エアコンのない夏休みの学校は暑くないのかと尋ねたら、午前の早い時間で、生徒も少ないためか、案外暑くないらしい。そういえば、夏に作業した時の部室は体育館に比べてずっと涼しくて、あまり暑かった記憶がない。
 昨日の彼女の様子から考えて、あまり頻繁に会うのは彼女の勉強に差し支えるような気がした。今日も午後は2人とも予定はなかったけど、誘うのはためらわれた。ちゃんと勉強しているだろうか。でも,会いたい。本当は毎日だって会いたい。

 夕方、電話があった。俺は図書館で勉強してたけど、そろそろ閉館時間だった。公園で待ち合わせて、ブランコの柵にもたれておしゃべりする。夏の陽射しはようやく傾いたけど、一日焼かれた地面は熱がこもっていてまだまだ暑い。

「ごめんね。突然。邪魔しちゃったね。」
「いや、いいよ。俺も会いたかったから。君は今日は補講だけだっけ?」
「うん。神井くんの選んでくれた問題集、先生も良いって言ってた。」
「そっか。よかった。勉強、ちゃんと捗ってるの?」
「英語は、結構良い感じだよ。神井くんも見てくれるし。」
「でも、肝心なのは数学と理科なんだろ?午後は何してたの?」

 彼女はその質問には答えず、補講のメンバーでの雑談の話をし始めた。最後の文化祭の話で盛り上がったらしい。何しに学校へ行っているんだろう。補講には田崎もいるらしい。なんだか、もやもやする。神井くんは?と聞かれて、朝から図書館で勉強していたことや、昼飯を食べた後に昼寝をした事などを話した。

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