坂道では自転車を降りて

 結局、次の日11時近くなってから学校へ行った。勉強を終えて家に帰る前の彼女を捕まえる為だ。どこで話そうか考えて、演劇部の部室を覗いてみると、私服姿の椎名と織田がいた。
「今日も活動してたのか。夏休みだからって私服で学校来るなよ。」
「あー、いや。今日はこれから買い出し行くんです。在庫ノート違うのを持って帰っちゃって。」
「遠足ですよ。裏方組みんなでピザ食って、ハンズ行くんです。」
2人は目を合わせて、「なっ。」と言った。横浜か。楽しそうだな。

「そうなんだ。そしたら、この後、部室使わせてもらっていいかな?」
「良いんじゃないですか。今日は活動ないし。」
「そういえば、大野先輩も最近、学校に来てますね。時々見かけますよ。」
「そうみたいだな。」
「またぁ。。先輩達、部室で変な事しないでくださいよ。」
2人はニヤニヤと俺を見た。

「いや、あー。。違うんだ。また、ちょっとゴタゴタというか、避けられてて。」
「またですかぁ?」
椎名が呆れたような声を出した横で、織田の表情が変わった。
「大野先輩、素直じゃないからなぁ。」
「いや、俺も悪いのかもしれないけど。」
椎名が話す横で、織田は無言で俺を睨んでいる。突き刺すような視線が痛い。

「さっさと仲直りしてあげて下さいよ。大野先輩はあれで、すごい寂しがり屋なんですよ。可哀想じゃないですか。」
「分かってる。分かってるよ。」
分かっているはずなのに、何故だろう、いつのまにかすれ違って拗れてしまう。

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